久々に読書したら大アタリだった
小説を読んだのは数ヶ月ぶりだった。
近頃はもっぱらビジネス書を読むことが多くなっていて、純粋に読書を楽しむ機会が減っていた。
今回なんの気なしにAmazonで小説を買ってみたら大いにアタリだったので息抜きとして紹介しようと思う。
ちなみに僕の好きな作品ベスト3はこちら
「殺戮に至る病」我孫子武丸
「黒い家」貴志祐介
「十角館の殺人」綾辻行人
結構有名な3つなので好みの合う方もいるんじゃないかと思う。
今回読んだ「六人の嘘つきな大学生」もミステリー要素がありつつ、就職活動というイメージしやすいシチュエーション
のため、ドキドキしながらもバシバシ読みすすめることができた。
肝心な部分のネタバレを避けつつ簡単に紹介していくので、余暇の楽しみとして候補に入れてみてほしい。
イケイケのIT企業「スピラリンクス」
舞台は2011年東京。
2年前mixi・Facebookと共に爆発的ヒットを果たしたSNS「スピラ」を手掛ける新進気鋭のIT企業「スピラリンクス」が新卒採用を開始した。
初任給は破格の50万円。
全国から「我こそは」という優秀な大学生がこぞって応募をし、その数は5,000人を超えるものになっていた。
度重なる選考を重ね、ふるい落とされる学生たち。
最終選考まで進んだ6人の学生を中心に話は展開していく。

6人の最終選考者
敗れ去った幾多の学生の上に立つのは、とびきり優秀だと思われる男女6名。
抜群のリーダーシップを持つイケメンやとびきりの分析力をもった才女など、いずれも輝きに満ちた人材であった。
最終選考は1ヶ月後。
選考方法はグループディスカッションで、テーマは当日発表。
内容次第では全員採用もあり得ると告げられた6人は、その日から選考を突破するため協力関係となった。
定期的に貸し会議室に集まり、情報整理やスピラリンクスが持つ潜在的な課題の解決方法などを話し合う。
残された時間いっぱいを使い、最大限のパフォーマンスをするために彼らは「仲間」となっていったのである。
「採用者は皆さんで決めていただきます」
突然送られてきた人事からのメール。
そこには選考方法の変更が記されていた。
採用人数は1名に絞ること、また採用者は全員で話し合ったうえ投票により決定すること。
残酷なまでの最終選考の方法に驚きを隠せない6人。
信頼し、尊敬しあっていた6人の関係に暗雲が立ち込める。
重々しい雰囲気のまま、6人は最終選考の会場へと足を運ぶのであった。
グループディスカッションLv.100
制限時間は2時間30分。
途中退出は許されず、スピラリンクスの人事は別室からカメラでその様子をモニターしている。
話し合い、30分おきに全員が自分以外のメンバーへと投票するというかたちで話し合いは進んでいくこととなった。
投票の時間が来るまでは各々「スピラリンクスへの入社がふさわしいのは誰か?」という意見を出し合っていく。
替えが効かないから誰々を推す、能力値が高いから誰々、理由はそれぞれだが、序盤は滞りなく話し合いは続いていた。
1時間ほど経ったころ、会議室の片隅で1通の封筒が見つかる。
封筒の中には小さな封筒が6通。
最終候補者のそれぞれへ宛てたものであった。
訝しみながら1つの封筒を開封すると、そこにはこんなメッセージが入っていた。
「〇〇は人殺し。」
犯人は誰なのか?
会議室にひっそりと置かれた封筒からは、6人が犯した過去の罪をリークする文書が順に出てきたのであった。
1人2人と罪が暴かれていく度むき出しになっていく感情。飛び交う怒号。
場を支配している話し合いはすでに「誰が入社にふさわしいか」というものではない。
罵りあい、糾弾し合い、右へ左へと票が流れていく。
そしてディスカッションが制限時間を迎えようとしていたとき、思いがけないかたちで犯人がみつかって……。
そして時が経ち…
地獄の入社試験から数年の時が経った。
犯人の病死を知ったとあるメンバーAは、遺族からある手紙を見せられる。
「犯人、○○へ」
これまで誰の手に渡ることもなかった遺書とも呼べるそれは、真犯人の存在を告げていた。
思い出したくもない記憶。
しかし、確かめなければならないことがある。
Aはかつての選考メンバーとの接触を試みる。
点と点が気持ちよく繋がっていく就活ミステリー
レビューといいつつも、この作品には下手に触れてはいけないことが多い。
序盤は特殊な就活をもとにした緊張感、中盤に犯人当て、終盤からひっくりかえして伏線回収という流れでストーリーは進んでいく。
伏線が割と多く、しかし無理なくフェアにちりばめられているため、ミステリ好きも騙されてしまう部分があるのではと感じた。
かくいう僕も読んでいるときは「いや、こいつが犯人ってオチでしょ…」「ほーらね!」「え?…でもまた半分しか読んでませんけど…」「え?!マジか…」という綺麗な騙され方をした。
犯人は誰なのか?というポイント以外にも叙述トリック的な騙されポイントが複数あって「早く…はやく先が読みたい!」と思わされる作品だった。
寝る前というよりかはガッツリ時間をとって読み始め、一気に読んでしまったあと訪れるカタルシスをじっくり味わってほしい。